下巻は、鄧小平が権力を掌握した後について書かれています。そのため、鄧小平本人よりも彼に任命された人達の功績と悲哀が描かれます。
鄧小平が主役ではないので、あまり面白くないのかなと思っていましたが、上巻以上に面白い。鄧小平は毛沢東から3度失脚させららましたが、鄧小平自身は華国鋒、胡耀邦、趙紫陽を失脚させ破滅させます。
特に、勉強になったのが、第2次天安門事件の経緯と現在に至る反日思想の形成過程についてです。
反日思想の形成過程について簡単に記すと、以下のようになります。
>天安門事件後
諸外国からの天安門事件に対する制裁。
ソ連と東欧諸国が崩壊し、中国も瓦解の危機。
マルクス・レーニン主義に若者が共鳴しない。
↓
>愛国主義へのイデオロギー転換
高度経済成長による祖国への誇り
中国を不当に批判する外国への反発
諸外国の台湾支持
南シナ海、東シナ海の島の領有権主張への反発
チベット人など少数民族の処遇に対する批判
↓
>第2次世界大戦中の反日宣伝工作の復活
靖国神社参拝
南京大虐殺
↓
>強い反日感情
↓
>中国j指導者への支持
1991年後半から教科書、講演、メディアを活用した、より体系的な手法を開発し、これを浸透させたそうです。
こういった話は、日本側から見た謀略説かと思っていましたが、ヴォーゲルも記載しているので、日本人だけの思い込みでないようです。
これを前提に考えると、今回の唐突とも思える防空識別圏の設定も、天安門で起きた自爆から眼をそらすためとも考えられます。
そうは言っても、鄧小平が望んだように、他国との良好な関係も重要ですから、愛国主義との両立が今後の中国の課題となるそうです。
ところで、この本には毛沢東批判ともとれる記載があるため、中国では発売されないだろうと思っていました。
しかし、中国版のアマゾンを見ると、上巻がすでに発売されており、驚きました。
2013年12月13日時点で776件ものコメントが寄せられており、関心の高さが伺われます。
そして、本の評価も5つ星が圧倒的に多く、中国は大分開かれてきているなと感じました。