2014年2月19日水曜日

257.「光秀の定理」 垣根 涼介

作者初の歴史小説。

明智光秀が世に出る前の落魄していた時代を主に描いています。
十兵衛(光秀)、兵法者の新九郎、坊主の愚息を中心に話が展開します。



主なテーマは、「何故、光秀が本能寺の変を起こしたのか?」

一つの見解として、それまで日本の国体は天皇であり、様々な宗教や思想が認められ、朝廷と幕府も併存していた。
しかし、信長が天下を統一すると天皇を廃止、君主制を敷き、宗教や思想を統一する可能性が高い。それを光秀が恐れたためではないかというものです。

その結末に結びつけていくために、4つの椀といって確率の錯覚から、物事の理を考えさせることで、登場人物の人物像を浮き彫りにします。

著者が史実をかなり調べたことが伺えました。それを全て使わず、ポイントだけ提示しています。歴史を描くのではなく、本能寺の変に向けて、信長、光秀、藤孝という人物の生き方にスポットを当てています。

手垢がついた人物達ですが、それらの思想に着目したことで、新しい観点を与えることに成功しています。