2014年4月21日月曜日

322.「紙の月」 角田 光代



2014年に原田知世さん主演でドラマ化され、
2015年に宮沢りえさん主演で映画化される原作です。

一億円を横領した中年女性を中心に、彼女と関わりがあった人物も詳細に描き、彼女がなぜ横領するにいたったかを綿密に記述していきます。

横領した梨花はもちろんのこと、倹約家の木綿子、買い物中毒の亜紀、お嬢様育ちの牧子・・・皆、お金に振り回されていきます。

社会の風潮と言ってしまえばそれまでですが、社会が豊かになり、格差が生まれ、不必要なまでの美食、自分をランク付けするための服飾、安易な消費者ローンが、人間を浪費に追い立てるのかもしれません。

梨花は、皆が貧しいタイのチェンマイでお金では得られない自由を感じます。しかし、その時にはすでに犯罪に対する罪悪感が徐々に彼女を蝕み、どこに行っても逃げられない拘束となっていきます。

「母親のも妻にもなり損なった、そればかりか、自分自身にすらなり損ねている頼りない女」
と亜紀が自分を表するように、自己の満足感を物やお金に求めると、自らも見失ってしまうということでしょうか。