御子柴礼司は被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士です。彼は十四歳の時、幼女バラバラ殺人を犯し少年院に収監されましたが、名前を変え弁護士となりました。
実際には、そんなことができるのか疑問です。
彼は、夫殺しの容疑で、懲役十六年の判決を受けた主婦の事件に、高裁の審理から弁護人となります。争点もないため勝ち目は薄く、主婦はお金を持っていないため高額報酬も望めません。
御子柴は、なぜ亜季子の弁護を希望したのでしょうか? そして第二審の行方は?
裁判員裁判制度が導入されてから、心証が裁判に与える影響が大きくなり、厳罰化が進んだそうです。その心の動きに着目した心理戦の裁判ミステリーです。
最後まで、人間の欲望や贖罪が暴かれ、償うということの意味を考えさせる非常にすぐれた小説です。