2015年7月22日水曜日

684.「新・台湾の主張」 李 登輝

台湾の第3代総統であった李登輝氏の自伝です。

台湾は、韓国併合(1905年)よりも10年古い1895年に日本の植民地となりました。

台湾には、後藤新平、乃木希典、新渡戸稲造といった日本の一線級の人材が投入され、教育に力を入れた近代化が図られました。

経済的な基盤があったゆえに、国民党が逃げ場に選び、その後も中国として対峙してこれたのだと思います。

著者を支那から来た外省人かと思っていましたが、台湾生まれの本省人でした。台湾で教育を受けて、京都大学に進み、日本の軍人となりました。人種の差別がなかったとは言えませんが、能力ある人には平等な機会が与えられていた証左といえます。

著者が自己の人格の中核に置いているのが、武士道とキリスト教です。現在の日本が失ってしまったのが武士道であり、その欠落が日本の問題を引き起こしているとの指摘は耳が痛いです。

現在、台湾は中国に飲み込まれる危機にあります。2016年の総統選挙で、中国との統一を目指す国民党が勝つか、独立維持を目指す民進党が勝つかが大きな分水嶺になります。台湾が中国に統一された場合、中国が次に狙うのは尖閣諸島と沖縄。そして、朝鮮半島です。そうなると日本は完全に包囲され、中国の支配体制に屈することになります。

著者は集団的自衛権行使容認を歓迎しています。これにより中国が尖閣諸島や南シナ海の問題で軽率な行動を取れなくなり、東アジアの安定に大きく寄与すると見ています。台湾の賢人の見方が非常に勉強になりました。