2015年8月3日月曜日

692.「人間の生き方、ものの考え方 学生たちへの特別講義」 福田恆存

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易しい文章で難しいことが語られます。都度都度思い悩んでしまいました。

「私はいろんな評論を書いていますが、それはタブーをぶち壊すためにやっているだけの話です。」と言うように、根源的な問いかけに対する自分の返答に窮します。

「なぜ人を殺してはいけないのか」
「なぜ人命は尊いのか」
「なぜ侵略戦争はいけないのか」

いずれも即答できないのは、普段からこういう問題を考えていないからです。

本書で、議会制民主主義における「強行採決」ってなんだろうという問いに対する答えに思い至りました。

議会制民主主義というのは、話し合いをやっても通じない場合に多数の意見を採るということです。いつまでも話し合っても議会が空転するからです。

ところが、こんな時には、野党側は審議拒否をするので、与党側は仕方なく単独採決します。すると、新聞は「少数の意見を尊重しない」として、強行採決と非難するのです。

多数決が民主主義であり、負けるからといって審議拒否することはサボタージュです。それなのになぜか議論が尽くされていないとして与党が非難されてしまいます。そうすると、反対者全員を納得させて全員が賛成票を投じないと強行採決となってしまいます。

強行採決とは、負けを認めたくない側が呼ぶ、ただの多数決のことではないでしょうか。

物事の通説を白紙にして、根源的なところから考えることの必要性を痛感しました。