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冬樹くんを溺愛していた担任の山本先生は、日都子がわざと金魚を殺したと決め付け、親友と思っていた嘉穂ちゃんが「殺したいって言ってたよね」と証言したことで、日都子はクラスから孤立した「ヒトリコ」になってしまいます。
「ヒトリコ」となった日都子が、どのような小学時代、中学時代、高校時代をおくるのか、ピアノを中心に展開していきます。
仲間はずれとなった日都子だけでなく、裏切った嘉穂、幼なじみの明仁、転校していった冬樹たちの背景や心理が描かれ、日都子をヒトリコにすることとなった状況も語られていきます。
どの子供にもそれぞれの家庭事情があり、大人の身勝手な締め付けがあります。それは、大人だからといって、精神が成熟しているわけではないからです。しかし、子供にはそんなことは分からず、大人の言うことに逆らえないで、精神が歪んでいきます。その歪みが身近にいるクラスメイトに向けられてしまうのです。
その中で生き抜くには、権力を握るか、権力者におもねるか、権力から距離を置くか。嘉穂、智代、日都子によってその構図が見事に描かれています。
切なくて少し悲しいけれど、最後に勇気づけられる本です。