2015年8月5日水曜日

694.「日本人はなぜ戦争をしたか―昭和16年夏の敗戦」 猪瀬 直樹

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「12月中旬、奇襲作戦を敢行し、成功しても緒戦の勝利は見込まれるが、しかし、物量において劣勢な日本の勝機はない。戦争は長期戦になり、終局、ソ連参戦を迎え、日本は敗れる。だから、日本開戦はなんとしても避けなければならない。」

これは、昭和16年夏に総力戦研究所研修生で組織する模擬内閣、「窪田角一内閣」の机上演習の結論です。12月中旬の奇襲作戦、ソ連参戦、そして敗戦とすべて的中しています。この結論は近衛内閣に対しても報告されています。

それなのに、なぜ戦争をしたのか。

その理由は、他に選択肢がなくなってしまったからと思います。東條内閣、窪田内閣の2つの内閣が何度検討を繰り返しても、開戦という結論に至ってしまいました。敗戦という結果が分かっていて、内閣に強い反戦論者がいて、東条首相が天皇から非戦を求められていたにも関わらずにです。

選択肢がなくなった理由は、アメリカによる石油禁輸です。これにより、日本のエネルギー枯渇が決定的となり、インドネシアの石油を獲りに行かなくてはならなくなってしまいました。そしてこれは必ず日米開戦の引き金となるものでした。

つまり、日本からの宣戦布告を望んだアメリカの策にまんまとはまってしまったのでした。

そして、日本はインドネシアの石油を確保しましたが、輸送船が次々にアメリカの沈められたため、せっかくの石油が日本に届くことはありませんでした。

石油とシーレーン。今日でも重要な資源です。これらを失うと戦争に追い込まれるほど日本にとって不可欠の資源です。国家存亡の危機に瀕するほどの重要な資源の確保は、現代でも最重視すべきテーマです。