2015年12月14日月曜日

791.「ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱 (光文社新書)2015/9/16 三好 範英

あるフィンランド人が「ドイツ人は夢見る人。」と言ったそうです。
「夢見る人」とは、現実を醒めた目で見ようとするよりも、自分の抱いている先入観や尺度を対象に読み込み、目的や夢を先行させ、さらには、自然や非合理的なものに過度に憧憬を抱くドイツ的思惟の一つのありかただそうです。

この気質により、福島第一原発の事故を冷静に分析せず、即座に反応して原発停止に踏み切りました。日本は、当時、ドイツを見習えという論調一色になり、菅直人首相も国内の全原発を停止しました。

しかし、現在ではドイツの判断は大きな問題を引き起こしています。太陽光発電の買取額上昇により、2014年度の家庭の電気料金1019.88ユーロは、2000年の価格に対して2倍強となってしまいました。しかも、風力発電を増やした結果、ぶどう畑の景観を損ね、発電機にぶつかって死亡する鳥が増えるなど、環境保護目的が環境を損なう結果となったいます。

また、ドイツはユーロ導入により膨大な貿易黒字を得ましたが、それはギリシアなど南欧諸国の赤字です。ドイツはギリシアに緊縮財政による再建を要求していますが、そもそもの原因はドイツの輸出であり、ドイツ自身が緊縮財政によって財政を再建したわけではありません。

ドイツの思い込みが、EUの中で問題を引き起こし、日本の戦後補償問題についても余計なことを発言することになっていると思いました。