登場人物のほとんどが精神を病んでいるような気質を持っていますが、現実社会も実はそうなのではないかと思えてきます。
ある小さな町で通り魔事件が起こり、それが連続殺人事件となって行きます。犯人は目撃証言から「コートの男」と呼ばれるようになりますが、不思議なくらい容疑者が見つかりません。なぜ、手がかりが掴めないのか・・・
それぞれの殺人事件が複雑にからまり連続性を形成します。さらには警察内部の権力闘争もからんで読んでいくうちに混乱してきます。しかし、これぐらいの混乱が本当の世界なのかもしれません。
人間の狂気を描くのが非常にうまい著者ですが、近年はそれに加え構成が複雑となり、重厚な小説となっています。
狂気が連鎖して新たな狂気が生まれます。不幸に浸かってしまった人間は、不幸の連鎖から抜け出せるのでしょうか。