2015年12月17日木曜日

794.「14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還」 澤地 久枝

著者自身の満州からの引き上げ体験記です。

1945年の終戦時、著者は14歳で満州の吉林省で暮らしていました。そこでの日本人の日常の暮らしや、自分の家族のことが淡々として文体で語られています。

ソ連参戦のどさくさに紛れて中国人が集団で日本人宅をおそい強奪していく様から現在の反日デモの時の略奪が民族的な特性ではないかと思ってしまいました。

また、占領していたソ連の兵隊が家に押し込み、白昼堂々、著者を連れ去ろうとするくだりは、ソ連軍の規律の乱れが伺えます。

著者の父親と懇意にしていた、韓国人の遠藤が実は連続強姦魔であり、日本人を偽って強姦を繰り返し、父から絶縁を告げられると、
「露助を連れて来て、(お前の娘を)強姦させてやる」
と言い放つくだりから、信義の捉え方の違いを感じました。

満州の引き上げというと、戦後すぐに日本に帰ってきたものと思っていましたが、著者は1年間、満州に留め置かれました。それは、日本政府から見捨てられた「棄民」とされてしまったためです。国家の身勝手さに慄然としました。