2015年12月20日日曜日

797.「会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから」 大西 康之

三洋電機がパナソニックに売却されるまでの経緯とその後の社員達の悲哀が描かれています。

三洋電機を解体して売却した、ゴールドマン・サックス、住友銀行、大和証券の非情さ。口では何と言っても利益優先のドライさは、結局ハゲタカに過ぎなかったと感じます。

吸収したパナソニックの残忍さも際立ちます。即座にサンヨーブランドを抹殺し、技術だけ奪って三洋社員を退職に追い詰める。

その一方で、京セラの温かさが対照的でした。稲盛さんはすでに一線を退いているものの、イズムが残っているように感じました。

意外だったのは、中国国有企業ハイアールの三洋社員に対する高待遇です。ただ、これはまだ技術力で日本人技術者が上回っているからで、中国人社員が追いついたら分かりません。

元三洋の社員達は、プライドと技術への拘りをもって頑張っていました。しかし、本書にも書かれているように、ここに書かれているのは一部の成功者であり、大部分は苦難の道を歩いているようです。

一つの国が成長している時、多くの会社が生まれ、その殆どが淘汰されていきますが生き残った会社が発展を続け大企業となります。それがかつての日本であり、現在の中国ではないでしょうか。しかし、これも創業者までで、2代目、3代目となると革新さを失う。これが現在の日本であり、そうして大企業が選択と集中で分解され、売られていくのが自然の流れなのかもしれません。