2016年12月8日木曜日

1059.「ルポ ニッポン絶望工場」 出井 康博

このタイトルだと、ブラック工場の実体のルポルタージュだと思いますが、本書はそういった内容ではありません。外国人実習生や偽装留学生の低賃金をルポルタージュしたものです。

高収入を期待して日本にやってきた実習生が実際は低収入しか得られず、日本で苦しい生活を送り犯罪を犯したり、帰国して反日になるという内容です。

その原因は日本政府の「留学生30万人計画」にあるとしています。

30万人という高い目標を達成するために入国の基準を低くしたため、偽装留学生が増えてしまったので、入口をもっと狭くすべきと言います。その一方で日本で働く外国人が減っているのは問題だとも言っており、矛盾しています。

最近ではベトナムからの偽装留学生が増えていると言います。しかし、ベトナムが貧しいのはベトナムの国策の問題ですし、ブローカーに騙されて日本で底辺の仕事についたのはブローカーの問題です。日本政府の政策でそうなったわけではありません。

初めから、著者の頭のなかには、「留学生30万人計画」が諸悪の根源という図式があり、その結論に向けて証拠が集められたような印象があります。

日本人がやりたがらない仕事は移民で賄うのではなく、まずは、待遇を改善して日本人が働きたくなる仕事にし、完全雇用を目指し、それでも人手不足の場合は、移民でなく、難民の方にやってもらえば、お互いに良い状態になるのではないでしょうか。