中小企業は、資金も人材も限られているので一つの事業に集中することが普通と考えていましたが、著者によれば、それは儲けるということを諦めることだそうです。その理由は、中小企業は市場規模も小さく、価格決定権がなく、いきなり市場が大きくなる可能性がないので良くて現状維持、どんなに頑張っても5%伸ばすのがやっとだからです。
「選択と集中」とよく聞きますが、それは本来大企業が生産性を上げて、高収益モデルになるための戦略、あるいは経営難の状態に陥った企業が巻き返しを図るための戦略だそうです。確かに、大手企業は多角化しており、業績が厳しくなったときに、「選択と集中」と言い出して事業を整理しています。
そして、多角化をしない企業は景気の波に左右されなんとか生き延びているということが多いように思えました。単一の事業で企業を大きくさせる、もしくは大きくさせないまでも安定させていくためには多角化が有効なように思えました。
本書は多角化経営について、その意義や方法を教えてくれる教科書のような本です。中小企業の経営者は近くに置いて、繰り返し読むと効果がある本だと思いました。